<想い>を噛む! その2

  石川県が公募する個人ボランティアには、県は安全第一の基本的な活動注意事項の他に、「被災現場の写真撮影禁止」と「SNSへの投稿禁止」をしっかり明示している。

 それは、肖像権の侵害防止や撮影許諾の確認が求められる等の遵守事項のみならず、近頃のSNSへの投稿閲覧で収益を得る行為の横行や、ひいてはフェイク情報による無用な混乱を避けるための必要措置だと想像される。それ自体に私も反論はないが、しかし実際の「X」や「Facebook」「Instagram」などのSNS上では、各種NPOや専門支援団体、更に一部自治体の社会福祉協議会までもが民間団体や自組織の活動記事を写真共々大きく載せている。

 こうした対応の不統一は、石川県としての統制が希薄、混乱している状況を露呈している。また、報道機関が公に伝えないマイナー過疎地の深刻な状況などは、そこに入った支援ボラ・団体しか知ることができない。

 そのため、それらの現状をリアルタイムで全国に伝える必要は間違いなくあり、その情報周知により、支援者が行うべき支援もより具体的、現実的なものになることは明らかである。よって私は、一律に写真撮影やSNS投稿禁止を呼びかける前に、県や報道機関はより正確で詳細な情報公開や状況報道に努める必要がある!と強調したい。

 

 今回の能登半島地震の支援ボランティア活動では、私は活動日数10日(県ボラ6日+NPO活動4日)及び移動日数2日の計12日間(車中泊9日+NPO拠点泊2日)を費やした。そこで出会ったボランティアは軽く100名を超えたし、前投稿に書いたように色々な考え方や価値観の人がいた。そして、身銭を切って奉仕活動しようと集まった人の中でも両極に意見が分かれる様子などをみると、私の感想も複雑だった。

 例えば、災害ゴミの片付け作業の仕方を巡って、ボランティア同士で判断が違うことも起こった。志賀町災害ボランティアセンターが配布した「災害ボランティア活動の注意事項」にも、「ボランティア同士の衝突は避けよう」という注意項目がある。これは、「現地では緊張状態が続き、精神的に大変になる人が多い...善意の押し付けにならずお互い冷静に...現地でボラ同士が衝突し、被災者に止められたり巻き込むようなことでは、何をしに来たのか分からない...」等の記載もある。

 事実、私自身もNPO団体での活動中に、相棒と一緒に粘土質の頑固な土砂や壁材等が倒壊山積した瓦礫の撤去作業をしていて、相手の判断にイライラして、語気強く意見を言ってしまったこともあった。続く車中泊のストレスなどで感情が高ぶっている心理状態は自分でもはっきり自覚していたし、志賀町ボラセンが言うように、被災現場で作業し或いは暮らす時間が長くなるほど、人は精神的に追い詰められる。増して、ボラ同士の熱意と熱意がぶつかり合うと、喧嘩になることも起こり得る。


 その一方では、山と積まれた瓦礫の処理や家財の片付けを前に、呆然と見守ることしかできない被災者も多くいて、いわば<極限状態に置かれた人間>には、様々な心象が発生することを嫌でも思い知らされた。

 それは、ボランティアとして、設定時間が終了しそれ以上作業できない無力さや、重機などがあれば一気に片付けられると思える悔しさであったり、被災者にとっては、今まで地道に築き上げてきたであろう家屋や家財などを全て処分しなければならない無念さや、家が倒壊し避難所での集団生活を余儀なくされている不自由さ等々に象徴されるが、それらを察すると時に理由なく涙が溢れてきた。

災害ゴミ除去に使った或いはこれから使う用具・工具たち
 
 現地被災者は勿論、その片付けを手伝うボランティアたちも、これら全ての<想い>を歯の奥でグッと噛みしめ、叫びたい気持ちを抑えながら今も過ごしている。

 亀裂が大きく走り隆起し、崩れた部分を砂利で応急処置している県道を車で走る度、私はそうしてハンドルを握っていた。



 人の人生には、様々なことが起こる。それらの逐一に一喜一憂することもいい。ただ、その一喜一憂すら心からできない現状が、今、能登半島で起きている。

 日本に住む者なら、誰もがそれを意識する必要があると思う。

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